カワサキGPZ900Rは、1984年から2003年まで20年の長きにわたって製造販売されたバイクです。過去の国産車の歴史において、これほど長期間製造されたバイクは、他に例がありません。
では、GPZ900Rとはどんなバイクで、どんな魅力があるのでしょうか。
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「世界最速」を目指して開発された車体の特徴
かつてカワサキにはZ1という4気筒モデルがありましたが、設計が1972年と古いためにライバルから見劣りしていました。そこで1980年台になって「世界最速」を目指して廃勝つされたのがGPZ900Rです。
まず特徴的なのはエンジンで、リッターあたり127馬力という高出力を達成するために、水冷DOHC4気筒4バルブが採用され、吸排気系をストレートとするためにサイドカムチェーンレイアウトとなりました。見た目はエンジン左右が非対称となりますが、これによって軽量コンパクト・大出力が可能となりました。
他には、大排気量車としては革新的なダイヤモンドフレーム、リアのユニトラックサス、16インチホイールを採用したことで、軽量コンパクトかつ低い車体が実現しました。
これによって、最高速253km/h、0-400m加速10.543秒という驚くべき数値を叩きだしました。
また、エッジの効いたカウル、四角いヘッドライト、フルカウルながらエンジンが見えるデザインなど、遠くからでも一目でそれと分かるもので、趣味性の高い乗り物であるバイクとして、まさにカワサキの新時代を担う高性能とスタイリングをまとっていました。
映画「トップガン」で一躍人気に
そんなGPZ900Rの人気が一気に高まったのが、映画「トップガン」です。
トムクルーズが演じる主人公が乗るバイクがGPZ900Rで、またたく間に世界的人気車となりました。
もともと900ccというのはカワサキが得意とした排気量であって、Z1もこのGPZ900Rも、リッタークラスより軽量コンパクトでありながら、同レベルのパフォーマンスを叩き出すというベストバランスの排気量なのです。
しかし2003年、発売から20年を経て古くなったことと、世界的な排出ガスや騒音規制をクリアできないことが分かり、製造が中止されました。
それでもGPZ900Rの人気は、不動のものです。
カワサキのスポーツバイクには「Ninja=ニンジャ(忍者)」というペットネームがつけられていますが、熱狂的なファンの多くはこう言います。
「Ninjaと呼んでいいのは、GPZ900Rだけ」
今、GPZ900Rを見ても、エッジの効いたフロントカウルの造形は見事だと思います。速さを感じさせると共に、迫力もあります。空力を充分に考慮した形でもあります。
1984年当時の世界最速市販車GPZ900Rは、製造中止から10年以上経った今でも、高い人気を誇っています。
それは1970年台に製造されたいわゆる旧車とはまた性格の違うもので、単なるノスタルジーばかりではない、現代にも通用するパフォーマンスをも秘めた、優れたバイクであることは疑う余地がありません。
そのスピリットは、現在のカワサキ製バイクにも受け継がれているのです。