トラクションコントロールシステム(Traction Control System、以下「TCS」)は、エンジン出力がダイレクトにタイヤに伝わることで起きるタイヤ空転を防ぐメカで、最近はハイパワーのリッターバイクによく採用されるようになりました。

ではTCSとは何か、またどんなメリットがあるのでしょうか。

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バイクのアクティブセーフティ

バイクの駆動輪はリアタイヤ1本ですから、それが滑ると車体挙動が非常に不安定になります。リアが左右に振られたり、転倒したりします。そこで、リアタイヤに伝わるトルクをケースバイケースで抑え、車体を安定させようというアクティブな安全装置が、TCSです。

車体に搭載されたジャイロセンサとコンピューターが加速度や速度を計算し、前輪と後輪の回転差が大きくなった場合や瞬時に変化した場合、エンジン出力を落としてスリップを抑えるメカニズムです。

大排気量車に必須のメカニズム

バイクレースのMoTo GPでもTCSは採用されています。150kg前後の車体に250馬力ものエンジンが搭載されているのですから、わずかなアクセル開度でリアタイヤは簡単に空転してしまいます。

市販車のリッターバイクも出力は100馬力以上あり、くわえて様々な路面状況で安全に走ることができるよう、TCSが装備されてきています。
必然的に、中型クラスのバイクには装備されていません。

TCSの効果は絶大で、雨天時やオフロードでも、低いギアで安心してアクセルを開けることができます。事実ヨーロッパでは、TCSを搭載したバイクのほうが安全レベルが高いと評価されています。

ただし過信は禁物で、TCSはリアタイヤに伝わるトルクを制御するに過ぎません。ライダーの腕を助ける装置ですから、TCSがあってもラフなアクセル操作をすれば、転倒する可能性はあります。

ABSや出力モード選択と併せて装備されている

つまりTCSは、バイクの加速やコーナーリングにおけるスリップや転倒を防ぐメカです。
一方、ブレーキングで転倒を防ぐ装置もありますね。ABSです。

TCSは、ABSと併せ、バイクの挙動を安定させるメカニズムであると言えます。
近年では、エンジン出力そのものを変化させるモード、例えば「RAIN」「SPORT」「RACE」の3つの出力特性と併せ、リアタイヤを制御し車体を安定させようというメーカーが増えてきています。

まとめ

TCSは、バイクのリアタイヤに伝わるトルクを自動制御するメカで、バイクが挙動不安定になったり転倒したりするのを防止するメカニズムです。

ABS等と併せ、様々なシーンでバイクが安全に走り止まるための装置です。ただし、あくまでライダーの腕を助ける装置ですから、過信せず、安全なライディングに心がけたいですね。